11-11

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<注>本作は原作の雰囲気および設定もろもろ、ぶっちぎりで構成されている短編となります。
過去作品をも踏襲しておりませんので、ご注意下さい。



11-11 ポッキーゲーム
(アラアスチャットの日付間違えました反省作品)




机の上に、不可思議なものが置いてあった。
大きさは片手よりも少し大きい箱状で、色は赤く、振ってみるとかさかさと音がする。
印字されている文字はどこか異国のものなのだろう。まったく読む事が出来ない。
箱には棒状のもの──全体の十分の一だけが白く、あとは黒光りしている──が数本書いてある。これはどういったものなのだろう。
箱をしげしげと見ていると、箱の小脇においてあったメモ書きが目に留まった。
たどたどしい文字で綴ってある。きっと一生懸命こちらの国の言葉に直したのだろう。
文法、文脈は少しおかしかったけれど、書いてある内容を推測するには十分な内容だった。

(意訳)
拝啓 アステア様

これはポッキーというお菓子で、子供から大人まで親しんでいる嗜好品です。
特に、恋人同士のスキンシップには絶大な効果を発揮します。
どうぞお召し上がり下さい。 匿名希望

メモには「恋人用の使用法」と注釈つきで挿絵が添えてあった。

…。
……。
…………。

「ええええええええええっっ!?」

居室に響いた自分の声にさらに驚く。
いや、でも、これは……つまり、その……と食べろ、ということ……か。
頭上に雲を浮かべて、その場面を想像してみる。
いくばくも経たないうちに、自分の顔から耳から湯気が上がるのをつぶさに感じ取った。
む、む、無理!それは無理!!

一人で赤面してかぶりを振っていると、タイミング悪くアランが部屋に入ってきた。

「!!」
「……? 何一人でわめいてるんだ?」
「う、ううん、なんでもない、なんでもないよ!!あはは……!!」

箱に軽く皺がよるほど握り締めた「ポッキー」。手の汗ですこし湿気を帯びている。条件反射的にすばやく後ろ手に隠してしまった。私の羞恥を消し去ってしまうように。

いや、でもこのメモ書きさえ始末してしまえばただのおかしの贈り物。
少々の後ろめたさを感じつつ、異国の甘味はアランに譲る事にする。

「あの、これ……、アランにあげるよ。」
「なんだこれは?」
「異国のお菓子で「ポッキー」っていうんだって。」
「お前が食べればいいじゃないか。」
「わ、私はお腹いっぱいだから……あは、あはは。」

少し不自然な笑いに怪訝な顔を浮かべたけれど、珍しいものだし疲れも回復する、などなどそれらしい理由を述べて無理やり押し付けた。
不承不承、という感じは否めなかったけれど、私から贈り物をするというのも珍しい事なので、「しょうがないな」などといいながらも苦笑つきで、ポッキーはアランの手に渡ったのだった。
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